漢方薬が効きやすい身体に戻す為の

生活養生三十箇条

「漢方薬は西洋医学に出効果がなかった病気に効く」という期待を皆さんはお持ちだと思います。  しかし、思ったほどよい結果が現れないことも確かです。それは何故なのでしょう?        漢方薬が生まれた時代と現代人の生活はあまりにも違います。効果が現れない方の背景には確実に食事と生活習慣に問題があることです。病気が治りきらない、再発する人は、今一度、食事と生活を見直してみましょう。ここでは、そのような人のための生活養生を記載しました。           「生活養生三十箇条」は中医師の「劉桂平(りゅうけいへい)」先生が監修、栃木中医薬研究会様が制作された『生活養生三十箇条』というパンフレットをもとにしています。

ここで書かれている生活養生を実践して、漢方薬の効きやすい、病気になりにくい体づくりの参考にしてみてください。

栄養素を有害物質に変える食事と生活

飲食物の栄養素は心も体も活動させるエネルギー源として、まら、心身を休息させて組織を再生する原料として使われています。                          飲食物を余らせて放置すれば腐敗して毒素が生じるのと同様に、体内で活動や休息に有効に利用されず過剰になった栄養素は、人体にとって有害な物質へと変わり、糖尿病や高血圧などの病気の原因となることは良く知られています。                     中学の理論と経験からも、過剰な栄養素は「湿」「熱」として有害化し全身の組織と機能に影響を及ぼし、慢性皮膚病などの原因にもなることが古くから認識されてきました。    食事と生活の乱れで消化器系「脾」を弱らせると、「湿」や「熱」をさらに増やし、心身を休息させる「陰」と声明を支える「精」の消耗にもつながります。

栄養素の有害化を防ぐ「生活養生法」

体内で有害化した栄養素の影響が長期にわたって全身に複雑に進行していくほど、病気が起こりやすく、薬で治療するのは容易でなくなり、健全な状態の回復は困難になり、やがて、各組織の老化を早めていきます。                             そこで、中医学は、有害化した栄養素の影響を薬によって治療する努力が続けられる一方で、もとより栄養素を有害化しないように食事と生活を最適化する「生活養生法」を考慮する努力も長年積み重ねられてきました。栄養素が体内で有効に活用されるためには、食事を控えめにバランスの良い内容にするだけでは十分ではなく、朝から元気に活動し、夜はゆったり休養するメリハリをつけた日常生活の維持も重要です。                   中医学の理論と経験から導き出された結論は、野菜を中心とした伝統的な食事と大自然のリズムに従う規則正しい生活が最適ということです。

生活養生30箇条

健康作りのために達成したい生活と食事の30の目標

1)早寝早起き、就寝は夜12時を超えない、深夜の仕事は早朝   に回して睡眠を先にとる

    深い休養と元気な活動に適した自然な人間の生活で、若々しい身体や肌を蘇らせる     「陰」や生命を支える「精」の蓄えを守る。                        ・真夜中までに床に入る                               ・朝早く起きて活動を始める

2)やさしい日光を浴びる習慣をつける

    心身のリズムを自然のリズムに合わせることで日常を支える「気」の流れを良くし     て、精神を活性化し身体を強固にする。                          ・朝はカーテンを開けて                               ・木漏れ日を浴びる

3)適度な運動の習慣をつける

    軽く汗をかく程度の、走る・歩く・動き回るなど、無理なく続けられる自分に合っ     た運動を、精神と体の健康の条件を整える

4)1日3食の時間帯を決めた規則正しい食事習慣をつけましよう

      ・朝食は便通のリズムをつけしっかり活動体制に                    ・昼食は午後の活動のエネルギー源に                         ・夕食はあまり遅くならない時間にゆったり休養体制に

5)食量は「腹八分目」が目安

    各人の適切な食量は経験的に知ること。中医学的な「脾」を中心にした消化器系に     負担をかけない為の基本。                                 ・苦しくならない                                  ・重だるくならない                                 ・眠くならない

6)穀類と野菜を中心とした食事にする。

    「脾」を健やかにする植物性食材で体内に余計な「湿」や「熱」を増やさない。食     材の8割を穀物、豆、根菜、葉菜、海藻にする。植物性のみの精進料理は和食の基礎     の一つです。健康的な和食の秘密はそこにあった。

7)主食4割、野菜4割、動物性食材2割に

    身体に負担をかけない和食的な構成に。質実剛健的な武士の精神から生み出された     本膳料理が和食の原型になった。健康的かつ実質的

8)多種類の食材を少量ずつ取り入れて。

    出来合いの惣菜や冷凍食品も料理の材料にしてうまく組み合わせ食べすぎないよう     に工夫して、各栄養素を偏りなく摂取できるように                     ・旬の食材を優先して選んで                             ・偏食を防ぎつつ過食を防ぐ

9)朝食は簡素な軽食にして

    できれば消化に良い温かいものを。                          胃腸に負担にならない量と内容で毎朝欠かさないように務める。

10)昼食はゆっくり時間をかける

     揚げ物や脂っこい料理など消化に悪いものは避ける。午後の仕事の支障となる重      い食事にならないように。

11)夕食は好きなものをたっぷり、ゆっくり噛んで楽しむ

     葉菜を主にした野菜も多く摂りましょう。葉菜は消化もよく、栄養豊富で胃腸を      強化しましょう。最低30回は噛む習慣をつけましょう。

12)野菜は温かい汁物・煮物・炒め物で多く食べる

     野菜は、胃腸に負担をかけずにビタミンを多く摂るため温かい汁物・煮物・ゆで      もの・炒め物で多く食べる。和食の調理法は、精進料理や懐石料理などの野菜中      心の食材構成で栄養を十分に工夫され、煮物や和え物が発達した               ・熱を加えることで、繊維で閉じ込められた栄養を吸収しやすくする。

13)野菜を先に食べ、過食を防ぐ

     具だくさんの味噌汁やスープなどで野菜を先に主食と食べることで、満足感を得      ながら過食を防ぐ。温かい汁で葉野菜をたっぷり、でんぷん質もしっかり食べま      しょう。                                      豊富な旬の野菜と油脂をあまり使わない調理法は、水が豊かな日本ならでは。       代謝機能に負担をかけない食事になります。

14)低塩分・低脂肪・低糖分になる工夫をする

     低塩分・低脂肪・低糖分になるように食材・調理法・調味料を工夫する。         濃厚な味にマヒした食生活から脱却する。食材本来の美味しさ・味わいの再発見      が健康をもたらします。

15)植物性食材と動物性食材のバランスを考える

     野菜は、胃腸に負担をかけずにビタミンを多く摂るため温かい汁物・煮物・ゆで      もの・炒め物で多く食べる。和食の調理法は、精進料理や懐石料理などの野菜中      心の食材構成で栄養を十分に工夫され、煮物や和え物が発達した               ・熱を加えることで、繊維で閉じ込められた栄養を吸収しやすくする。

16)脂っこいものの消化能力を考える

     揚げ物や肉料理については、消化能力の状態に配慮して献立を決める。          あるいは量を加減する。吸収と代謝機能の負担になって、体に有害な「湿」や       「熱」になりやすい。

17)以前に反応を起こした食品には注意する

     消化不良や体が受け付けない反応を起こしやすい食材(魚介類・牛乳・卵)には        注意する。                                     胃腸や体の負担になるものが拒絶反応を起こす。

18)カルシウムの摂取は色々なものから

     乳製品が体に合わない人は、大豆製品・野菜・小魚からカルシウムの摂取を        心がける。                                     いくらカルシウムが豊富でも有効に摂取されなければ無意味です。

19)生ものは旬のものを選ぶ

     生もの(刺身・生野菜・果物)は旬を選び、あまり大量に食べることは避ける。        大量の生ものは消化と代謝を傷害し「湿」を増やす。

20)香辛料の使い過ぎに注意する

     辛いもの(香辛料・辛味野菜)を必要以上に多量に使うのは避ける。             少量なら消化と代謝の促進に役立つが、多量では「熱」となる

21)ファーストフードを日常的な食事として取り入れない

     食欲をそそるための過剰な味付けや添加物で栄養のバランスを崩す

22)食欲が無いときは無理に食べない

     食欲が無いときや飲食物が持たれているときは無理に食べない。             あるいは軽く済ます。惰性的に食事せず、たまには抜いたりするのも健康に良い。

23)食後などに、緑茶・紅茶を飲むことを習慣に

     辛いもの(香辛料・辛味野菜)を必要以上に多量に使うのは避ける。             少量なら消化と代謝の促進に役立つが、多量では「熱」となる

24)間食には、自然のままの野菜ジュースを摂る

     間食としては、野菜ジュース・l果物・豆乳など自然のままの甘みと栄養を        選ぶようにする。おやつの楽しみも健康に役立ちます。

25)砂糖を多く使ったお菓子のご注意!

     砂糖を多く使ったお菓子・ケーキ・デザート・アイスクリーム・清涼飲料水はあ      まり摂らない。甘みは適量なら栄養と休息に役立ちます。                しかし、過剰になれば肥満 になるか、体内の働きに負担をかけ、「湿」として      有害化し病気の元になります。

26)冷たいもの(飲みもの・食べ物)を摂り過ぎない

     冷たいものの摂り過ぎは、胃腸に余分な「湿」を増やします

27)コーヒーは飲み過ぎない

     目を覚ますためにコーヒーに頼り過ぎない。                      それは、日内リズムに悪影響します。

28)アルコール飲料は飲み過ぎない

     アルコールの摂り過ぎは生活リズムを崩します。                    栄養素の代謝を傷害し、体内の有害物質を増やします。

29)タバコはやめる

     もとより毒性があり、過剰な栄養素の有害化をさらに助長して多くの病気を悪化      させる。たばこ依存症の生活から脱却する努力をしましょう。

30)楽しみながら、毎日取り組む

     生活養生は自分の体と自然を愛する気持ちで健康作りの楽しみとして毎日取り組む