目がかすむ?それは老眼?白内障のサインかも?
白内障は、カメラのレンズに相当する水晶体が白く濁る病気です。
水晶体とは、目の中でカメラのレンズのような働きをする組織で、外からの光を集めてピントを合わせるはたらきを持っています。
本来は透明である水晶体が濁って透明度が低下すると、光がうまく通過しなくなります。
その結果、光が乱反射して網膜に鮮明な像が結べなくなり、物がかすんで見えたりするようになります。
実は40代から発症する人も多いのですが、老眼と勘違いしている人も少なくありません。 メガネをかけても見え方が変わらなければ白内障の疑いが高いです。 白内障の9割以上は加齢が原因で起こる「加齢(老人)白内障」です。
白内障の症状 ・視界が全体的にかすむ ・視力が低下する ・光をまぶしく感じる ・暗いときと明るいときで見え方が違うなど
白内障は、どんなに症状が進行しても手遅れということはありません。 ただし、他の病気を併発する可能性もありますので、症状が気になったら眼科を受診しましょう。
現在は白内障の手術の技術進歩は著しく、比較的容易に行うことが出来ます。 よって、手術をしてスッキリとした視界を早く取り戻したい考え方で手術を受けるのが主流です。 白内障の進行状況がそれほど悪くなく生活上で大きな問題がない場合、手術にこだわらなくても良いように感じます。その場合において、漢方薬で状況を改善し、進行を食い止めるという方法も考えてみてはいかがでしょうか。
中医学で白内障を考えると、基本的には五臓の「腎」と「肝」の問題に集約されます。 中医学では「肝は目につながる」といわれ、目は五臓の中でも肝と深いつながりがあると考えます。 肝の血が十分蓄えられていれば、必要な栄養や潤いがいきわたり、目も良く見えるというわけです。 過労や老化などで肝の働きが低下したり、肝の血が不足すると、眼精疲労や目のかすみ、視力の低下、ドライアイなどの症状が現れることも。
また、「腎」は生命力や生殖力と関連した"臓"であり、加齢により衰えます。 よって、白内障が高齢になると起こりやすいという事実より、白内障の原因は、「肝」と「腎」の衰退に関連していると考えて間違いありません。
白内障では「陰虚(いんきょ)」と「陽虚(ようきょ)」では治療法が違う 中国漢方がよく分かる本 路 京華著
中国漢方を熱心に勉強している開業医の1人から、こんな話を聞いたことがあります。 漢方薬に興味を持った当初、白内障に「八味地黄丸(はちみじおうがん)」がよいという記事を読んで、1ヶ月ほどまじめに服用した。 ところが、症状がよくならないばかりか、口渇やのぼせがだんだんひどくなり、血圧も上昇、ついには眼底出血まで引き起こしたという。疑問を持った氏は、あらためて中国漢方を一から勉強し直してみて、その原因をつきとめました。
氏の体質は、手足のほてりやのぼせといった熱性の症状が出やすい陰虚(いんきょ:体液不足)タイプでした。 八味地黄丸には、体を温める作用の強い附子や桂枝が入っており、陰虚タイプの人が服用すると熱や乾燥症状がさらにひどくなります。 このタイプの人は、八味地黄丸から附子や桂枝を抜いた、「六味地黄丸(ろくみじおうがん)」系統の薬を使うべきでした。
そこで、六味地黄丸に目の働きをよくする枸杞子と菊花を加えた「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」を服用したところ、快方に向かいました。 その後、不眠症状がある時は「天王補心丹(てんのうほしんたん)」、のぼせやほてりが強い時は瀉火補腎丸と、六味地黄丸系統の薬を使い分けて、非常に調子がよいということです。
漢方薬を西洋医学的な病名だけに頼って使うと、時としてこんな落とし穴にはまることがあります。同じ白内障でも、陽虚(冷え)タイプの人であれば八味地黄丸の適用となります。
漢方薬は、それぞれの体質や状態(寒熱・虚実など)を慎重に見極めたうえで選びたいものです。
陰虚タイプで不眠傾向がある方の白内障に「天王補心丹」