エイジング(老化)の原因は糖化だった?

身近に存在するAGEs

糖化(とうか)って何?

糖化とは、身体の中で蛋白質と余分な糖が結びついてタンパク質が変性し、タンパク質の働きが悪くなりAGEs(蛋白質と糖に熱が加わって出来た物質で、終末糖化産物)という名の老化物質を生成する反応をいいます。                              近年、世界中の研究で注目されている「老化の原因物質」と言われています。        例えば、“老け顔の人は早死にする可能性が高い”という研究結果もあり、外見と体内の老化が密接に関係することがわかってきました。                        この老化物質AGEsは分解されにくく、加齢に伴うシミ・しわなどの美容面だけでなく身体全体の健康に影響を及ぼし、骨など全身の老化を進行させ、さらに体調不良や様々な病気(糖尿病、高血圧、がん等々)の温床にもなります。

中医学で老化と密接な関係があるものは、「腎」の機能の衰えと「瘀血(おけつ)」が考えられます。                                         ここでは、中医学から「糖化」「AGEs」「腎の衰え」「瘀血」を考えてみたいと思います。

老化と糖化には密接な関係がある!

早すぎる老化の原因は?

身体を健康に保つには良質なたんぱく質を摂る必要があります。                 その理由は、私たちの体はの筋肉や血管、肌なども蛋白質でできているからです。         いつまでも健康を保つためには、その蛋白質を劣化させない必要があります。

さて、私達の体の中の蛋白質を劣化させる原因は何でしょうか?                 それは私たちの身近にある「糖質」です。                           摂り過ぎた糖質は、タンパク質と結合しやすい性質があります。                 その結果、余分な糖と結びついたタンパク質が変性・劣化して、AGEsもしくはAGE(糖化最終生成物)ができてしまいます。                                    下図にAGEsが生成するプロセスを載せておきます。

老化の原因AGEsの生成プロセス

「AGE」「AGEs」は身体中の蛋白質に影響を与えます

余分な糖とタンパク質が糖化反応(蛋白質と糖がくっつく反応)でAGEsが作られました。このAGEsは身体に対してどのような反応をするのでしょう。

1)タンパク質を劣化させます                               2)タンパク質の働きを停滞させる

上の図においてAGEsが作られるプロセスの途中に「HbA1c」が出てきます。          もし、糖尿病の方でHbA1cの数値が高い方なら、そこから様々な合併症が引き起こされる可能性が高いと言えます。                                       下の図では、「蛋白質」と余分な「糖質」が結合して糖化によって、「AGEs」が生まれてしまいます。「AGEs」は「蛋白質」を攻撃してタンパク質の変性が起こります。            AGEsは、加齢に伴うシミ・しわなどの美容面だけでなく身体全体の健康に影響を及ぼし、疾病を引き起こすリスクにもつながるのです。

糖化と老化のプロセス

AGEsが体内に蓄積される2つの仕組み

体内で作られるAGEs                                   血液中のブドウ糖が過剰になると、体の細胞や組織を作っている蛋白質に糖が結びつき、体温で温  められて「糖化」が起きてAGEsが作られます。                       その生成段階で糖の温度が下がればもとの正常な蛋白質に戻ることができますが、ある程度の期間、 高濃度の糖にさらされて、AGEsに変わった場合は、細胞や組織がもとに戻れなくなります。

②食べ物から取り込まれるAGEs                               私たちはいろいろな食物・飲み物の中に含まれたAGEsを日々摂取しています。         体内に取り込まれたAGEsの一部は、消化の段階である程度分解されますが、約7%は排泄されず  に溜まっていきます。

AGEsが身体に及ぼす影響

蛋白質は人間の体内の至る所に存在するため、それぞれの臓器を構成する蛋白質が糖化することで様々なAGEsが作られます。                                  一度作られると組織に沈着してなかなか排除されず、病気の引き金になります。

AGEsが広範囲に体に影響を及ぼします

AGEsの多い食品・少ない食品

焼き物や揚げ物などに「焼き目の付いた食品は、AGEsが多い」ことを目安に覚えてください。  同じ加熱でも、蒸す・ゆでる・煮るなどの油を使わない調理法は、AGEsの産生を抑えることができます。                                           加熱調理しない生野菜や刺し身などの生の食品はAGEsの少ない食品と言えます。

焦げ目のある食品の摂りすぎには注意を!

AGEsを減らす生活術でアンチエイジング

老化の原因物質であるAGEsを体内で発生させないためには血糖値を上げないことが大切です。アンチエイジングにはAGEsを減らす工夫を心がけましょう。

1.よく噛んで、ゆっくり食事をする                              2.野菜、肉、魚、ご飯やパンの順番で食べる。                         3.甘いものが食べたいときは食後にする                            4.食後の軽く体を動かす習慣をつける                             5.強い光を浴び過ぎない                                   6.ストレスをため込まない

あなたの「AGEs」度をチェックしましょう

普段の生活習慣を振り返って、身体のAGEs度とその危険度を計ってみましょう。以下の質問で当てはまる項目にチェックを入れてみてください。

AGEs度チェック表

チェックが多い方はAGEs産生度が高いと考えられます。                    ・6個以上は要注意です。しっかりと対策を始めましょう。                   ・10個以上はかなりAGEsが溜まっていると考えられるので、病的な老化が心配です。

  漢方生薬の研究に長年携わっていらっしゃる横澤先生からメッセージがあります。

疾病のバイオマーカーとしてのAGEsと漢方薬

                    富山大学大学院理工学研究部                             国立釜山大学分子炎症老化制御センター                                   横澤 隆子先生

AGEs(終末糖化産物)は疾病の成り立ちに大きな役割を担っており、糖尿病の進展や動脈硬化などを含めた老化の仕組みに深く関与していることが知られています。          これまで、活性酸素・フリーラジカルなどによる酸化ストレスが動脈硬化や老化に関係することが知られてきましたが、それだけでは疾病の前駆状態や老化現象を説明することができませんでした。

そこで登場した概念やカルボニルストレス〔酸化ストレスにさらされると、糖や脂質からカルボニル化合物(RCOs)が生成し、生体の消去能力を超えて増加した状態〕です。      カルボニルストレスによって生成されるものがAGEsです。              AGEsの排泄系は、腎臓からの排泄が主体ですが、細胞や組織内の代謝系によっても分解されます。

一方、AGEsは細胞膜のRAGE(AGEs受容体)に作用する以外に、細胞内外の各種蛋白質(コラーゲンや白内障に係るクリスタン、糖尿病性神経症に係るミエリンなど)を凝集することが知られ、AGEsの形成を抑制するなどの開発がなされています。            とりわけ、丹参製剤(たんじんせいざい)や補腎薬などの中成薬・漢方薬が、AGEsの産生を強く抑制する知見が報告されています。

合成品に関する報告も散見されていますが、毒性や副作用の面から足踏み状態で、漢方医学の重要性が再認識されています。

肝腎の潤い不足に
ストレスに
血の不足に
気血不足に