元気な夏を過ごす「暑さ」対策
暑さも日々厳しくなり、いよいよ夏も本番です。 海へ山へと自然の中で過ごすことも多い楽しい季節ですが、強い日差しや暑さで体調を崩してしまうことも少なくありません。 今回は、日射病や食欲不振など、暑さからくる体調不良を予防する、健康的な夏の過ごし方をご紹介します。
◎夏に気を付けたい、「心」への負担と「脾胃」の不調
暑さからくる夏特有の体調不良は「暑邪(しょじゃ)」が原因になることが多いです。 暑邪は自然界から入ってくる邪気「六淫(ろくいん)」の一つで、この邪気に身体が侵されるのは高温多湿の夏だけです。
「暑邪」は陽邪であり、「炎熱」の性質を持つ暑邪が身体に入ると、熱で頭が働かずボーっとしたり、皮膚の弱い人は赤みが強く出て悪化したり、ひどく汗をかいたり、といった影響が現れます。 中でも、汗のかき過ぎには要注意です。中医学(中国漢方)では、汗を身体をみずみずしく保つ津液(水)の一つと考えています。 汗をかき過ぎると、津液とともに「気(エネルギー」)も消耗してしまうため、倦怠感や息切れといった体調不良につながるのです。
◎中医学の湿邪と夏邪
また、身体の水分が失われると血液が濃縮し、「心」にも大きな負担がかかります。 汗のかき過ぎによる動悸やめまいは、心へのダメージが大きくなります。 症状が重くなると心不全など重大な病気を引き起こすこともあるので、十分注意してください。
もう一つ、夏に気を付けたいのは「脾胃」の不調です。 高温多湿の日本の夏は、暑邪とともに「湿邪(しつじゃ)」が侵入することも多くなります。 そのため、湿気に弱い脾胃の機能が弱くなり、食欲不振や下痢、夏痩せといった症状が現れるのです。
このように、夏の暑さ対策は「心」と「脾胃」がポイントです。 夏の疲れや体調不良を秋に残さないよう、日頃の食事や過ごし方に気を配り、しっかりと予防、対応しておきましょう。
厳しい暑さが続く夏は、一年を通じて最も体力を消耗しやすい時期です。 この季節を元気に過ごすためには、なにより日頃の健康管理が大切です。ここでは、夏の体調不良を3つのタイプに分けて、養生法をご紹介しましょう。
◎「心」を守る 熱の影響が強い「暑熱」タイプ このタイプの体調不良は、炎天下など暑さの強い場所に長くいることが原因です。 顔がほてったり、身体に熱感を感じたりしたら、暑邪の影響が現れ始めているサインです。 また、過剰な汗で、口の渇きやのどの痛みを感じるほか、熱が身体にこもってムカムカした感じがしたり、なかなか寝付けずに不眠に悩まされたり、といった症状が現れます。 暑熱タイプの体調不良は「心」への負担となり、悪化すると心不全など重大な病気を引き起こす要因にもなります。症状が軽いうちに、しっかりと対処しておきましょう。
庭の手入れや買い物など、日常の暮らしでも炎天下で長時間過ごすことは意外と多いもの。外出の際は、帽子や日傘などで強い日差しをやわらげる工夫をしてください。日射病でめまいや吐き気などを感じたら、冷たい水で顔を洗う、涼しい場所に移動するなど早めの対応を。症状がひどい場合は、すぐに病院で診察を受けてください。
◎脾胃をいたわる 「湿邪」をともなう「暑湿」タイプ 蒸し暑い日本の夏は、暑さに加えて「湿邪」の影響にも注意が必要です。 冷たいものを摂り過ぎたり冷房で身体が冷えたりすると、水分をコントロールする脾胃の機能が弱くなり、湿邪が溜まってしまいます。 結果、吐き気やおう吐、食欲不振、軟便、下痢、胃の膨満感といった脾胃の不調が現れるのです。 また、頭が重く、倦怠感を感じるのもこのタイプの特徴。舌は湿っぽく、苔は白または黄色がかった色になります。
このような不調を感じたら、湿邪や熱を取り除き、脾胃を補う食べ物を食事に取り入れるようにしましょう。 また、冷房の効いた部屋で長時間過ごすことはなるべく避けたいもの。オフィスなど調節ができない場所では、ときどき外の空気に触れる、ブランケットなどを用意してなるべく身体を冷やさないようにする、といったちょっとした心がけが大切です。
◎肺を補う エネルギー不足の「気虚タイプ」 体内の「気(エネルギー)」が暑さで消耗したり、汗と一緒に流出してしまったりすることで、夏はエネルギーが不足しがちになります。 このような「気虚」の状態になると、夏やせや疲労感、倦怠感、といった症状のほか、多汗、動悸、息切れ、食欲不振などの不調が現れます。
気を補う大切な役割を担っているのは「肺」です。身体に疲れやすさやだるさを感じたら、肺を補って気力、体力を充実させるよう心がけてください。
体力不足の疲れやすい状態では、夏の暑さにも負けてしまいます。また、夏の疲れは長引くことも多いので、秋を元気に過ごすためにも夏の間にしっかり養生して元気をつけておきましょう。
昼夜を問わず暑さが続く真夏は、エアコンの冷たい風につい頼りがちです。 でも、涼しさを求め過ぎると冷気で身体の陽気が奪われ、体調を崩してしまうこともあります。 家での冷房は、汗が引くまで使う、こまめに温度調節をする、風が直接当たらないようにするなど、バランスを考えて上手に使うことがポイントです。
太陽が早く顔を出すこの時期は、早起きをして朝の新鮮な空気をたっぷり吸いこむのも良いですね。 朝は気温も低いので、身体を動かすのもおすすめです。 ただし、睡眠不足には要注意。体力が不足しがちな夏は、睡眠で疲労を回復することが大切です。 寝不足かなと感じたら、昼寝や早めの就寝で睡眠を補うようにしてください。
また、中国には「心静自然涼」ということわざがあります。 “夏の暑さにイライラすると、よけいに暑くなるだけ。ゆったりとした気持ちでいれば、涼やかに過ごすことができる“ と教えていますが、その通りかもしれませんね。 暑さにストレスを溜めず、夏を元気に乗り切りましょう。