胆を温めて不安定な精神状態を改善
日本のちょっと変わった夏の風物詩に、怖~い怪談噺やお化け屋敷がある。肝を冷やすような恐怖体験によって、一瞬、暑さを忘れたいという、日本人の生活の知恵なのかもしれない。 中国にこういう習慣はない。「胆を冷やす」以外にも、日本には「胆試し」「胆をつぶす」「胆っ玉が小さい」など、胆に関する言葉がたくさんある。これらはいずれも漢方の考え方に由来するものと思われる。中医学でいう胆(たん)は、現代医学でいう胆嚢の働きの他に、「決断を主る」と言われるように、人の精神活動と関係の深い臓腑と考えられている。 中医学では、物事にビクビクする、不安感、決断に迷うといった精神状態を「胆寒(たんかん)」という。昔の人は、このような症状を直感的に胆の冷えと考えたようだ。ただし、この場合の「寒」というのは、単に冷たいという意味ではなく、胆の異常によって引き起こされる不安感や恐怖感、驚きなどの精神状態を表すものである。 このような不安定な精神状態を改善する薬に、「温胆湯(うんたんとう)」という処方がある。 つまり、胆を温め(強め)ることにより、胆力をつけるというわけである。 古来、不安神経症や不眠症の薬として重宝されてきた。熱がこもりイライラ感や不眠の症状があるときには、神経の高ぶりを抑制する黄連(おうれん)や、精神安定作用のある酸棗仁(さんそうにん)を配合したイスクラ温胆湯エキス顆粒が効果を上げる。