同じ膀胱炎でも急性と慢性では漢方薬は違う
日本でも数多くの医療機関で漢方薬を使用するようになっている。 ただし、中国の漢方医が日本の病院を見学して驚くのは、漢方薬を西洋医学的に運用しているケースが多いことです。
極端な場合には、慢性肝炎には何番のもの、高血圧には何番のものといった具合に、病名を処方の商品番号と対応させて使用させているようなこともある。 これでは形の上で漢方薬を使っていても、実際には西洋医学的な治療を行っていることになり、季節や個々の患者の体質、病状を考慮して投与するという、漢方ならではの持ち味を生かすことは難しい。
膀胱炎を例にとってみてみましょう。 現代医学では炎症と言えば、先ず抗生物質を使用します。漢方薬でも、猪苓湯が抗生物質的な感覚で使われているようです。 しかし、猪苓湯がすべての膀胱炎に使えるわけではありません。同じ膀胱炎でも急性か慢性かで、使用する漢方薬は違ってきます。
急性期で尿が出渋る、排尿時に痛みや熱感を伴うような場合には、消炎・利尿作用の強い「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」や「五淋散(ごりんさん)」等を使用します。
老人など体液が不足気味の人で、痛みや熱感はおおむね治まったが、まだスッキリしない場合には「猪苓湯(ちょれいとう)」が良い。 軽い膀胱炎症状が慢性的に継続する場合は、トイレが近く、抵抗力が低下していることが多く、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」を使用すると良い。